『やがて君になる』

©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 まだまだBLには及ばないながらも、最近とみに充実度が増している百合漫画。この作品の原作も、ジャンルとしてはたぶん百合漫画とされているのでしょうけど、私は女性同士の恋愛というよりも、それぞれの心に何かが欠落しているふたりの女の子が作り上げる関係性と、その変化のお話だと捉えています。それがたまたま同性だっというだけで、どちらかというと同性同士の恋愛というよりも、人間同士の関係性と内面の変化がテーマだと思っています。

 この作品の良いところは、原作をとても大切にしているというところです。ほぼ原作に忠実に、でも、映像作品としての独自の解釈やプラスアルファを行いながら、とても丁寧に作られています。

 ただ問題が一つ。原作はまだ完結していません。なので、仮に原作をすべて消化したとしても、オリジナルの展開を採用しない限り、物語としては完結しない。さらに、アニメのペースでは原作を消化するどころか、原作の途中で、しかも、この物語のターニングポイントとして非常に重要な位置づけである生徒会劇の場面まで、たどり着くことができないという問題がありました。

 実際、アニメではその生徒会劇の直前で、終わってしまっています。私は原作を読んでしまっているので、はたして原作未読の視聴者はどのような感想を持たれているのか分かりませんけど、これは中途半端感が否めない終わり方ではないかと思わざるを得ません。

 なので、最初私はBest5に入れないでおこうと思っていました。でも、やっぱり入れることにしたのは、それを差し引いても素晴らしい作品だし、できれば第二期を作ってもらいたいし、そのためにも少しでも多くの人に、この作品のことを知ってもらいたいと思ったからです。

 それともうひとつ、全話を通して、とても繊細な演出がなされているのですけど、特に第六話、この回の絵コンテをあおきえいさんが担当されていて、それがもう素晴らしいのです。特にBパートの絵コンテは神がかっています。この第六話Bパートだけで、Best5に入れる理由としては十分なくらいです。ほんとすごい。

 このお話、主人公のふたりの女の子の心の動きは、かなり特殊です。頭では理解できても、果たして実際にこんな関係が成立するかと言われたら、私はかなり疑問です。それくらい特殊な関係で、しかもほんの少しでもお互いの気持ちがぶれてしまったら、あっという間に破綻してしまうような微妙な関係でもあります。

 なので、その関係性を説得力を持たせながら映像化するというのは、かなり苦労されただろうと思わずにはいられません。それを、先に挙げたあおいえいさんはじめ、各話の絵コンテ、演出の方たちは見事にすくい上げ、くみ取っていると思います。

 だからこそ、ここで終わってしまうのは非常にもったいないです。原作もまだ未完ということもありますし、原作が完結した折にはぜひ最後まで映像化してほしいものです。それを切に願います。

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