『るろうに剣心 ―明治剣客浪漫譚―』(1996年1月10日~1998年9月8日放送)

©和月伸宏/集英社・アニプレックス

 さて。アニメモランダムall-time favoriteの記念すべき最初の作品がなぜ『るろうに剣心』かというと、これを書いている2019年今期冬アニメ(2019年1月~)として放映中の『どろろ』の監督が古橋一浩さんだから。古橋さんといえば、最近だと『機動戦士ガンダムUC』や『将国のアルタイル』を手掛けてますけど、私にとってはやっぱり『るろうに剣心』なんです(『どろろ』についてはアニメモランダム2019年で改めて書きます)。

 この作品、語りたいことがたくさんありすぎて困っちゃうんですけど、今回は古橋監督が自ら絵コンテ演出を手掛けた京都編の第30話と第31話(第31話の絵コンテは共作)に絞っちゃいます。当時はまだ神回なんていう言葉はなかったと思うんですけど、この2話、マジ神回です。

 原作はあまりにも有名で、いまさら説明する必要もないですよね。実写映画化もされていますし。この映画がまた素晴らしい出来で、特に佐藤健くんがむちゃくちゃ可愛くて、いやもうこっちがヒロインでしょ?(武井咲ファンの方ごめん!)と思ってしまうくらい……ってすみません果てしなく脱線しそうなのでやめます。

 簡単に言いますと、かつて幕末の頃、有名な人斬りとして恐れられていた主人公緋村剣心、人呼んで人斬り抜刀斎が生き残り、明治の時代に「るろうに」(原作者の造語で流浪人のこと)となって様々な事件に巻き込まれていくというお話。

 TVアニメは二年以上にもわたる長期間制作されています。でも、とにかく素晴らしいのは第28話からスタートする京都編。原作もそうでしたけど(原作の話をするとまた脱線するのでやめますけど)、この京都編、とにかく力が入っています。

 ちなみに、第29話の絵コンテは細田守さん(『未来のミライ』がアニー賞 長編インディペンデント作品賞を受賞しましたね)で、これまた素晴らしい絵コンテなんですけど、第30話と第31話はそれさえも圧倒的に上回るとんでもない作品になっています。

 第30話はとにかくアクションのキレがすごい。ついさっき第28話から第31話を見返しました。いやー。今見ても、何回見ても、本当にすごいです。主人公の剣心とかつての新選組三番隊組長斎藤一との対決のシーン。カット割り、緩急の付け方、細部まで目が行き届いた演出、完璧です。しかも、音楽とのシンクロもばっちり。そして、これが前半のAパートという構成もまたすごいです。

 第31話は前回と打って変わって静の演出が素晴らしい回です。昔の作品なので細かく語っちゃいますけど、この回のラストで主人公の剣心が一人京都へと旅立っていきます。彼に思いを寄せている薫という女の子がいて、二人の別れが描かれているわけです。

 まず、すごいのが、その別離のシーンで『カヴァレリア・ルスティカーナ』っていうオペラの間奏曲が使われているんですね。この曲、けっこう有名で、たぶん皆んさん一度はどこかで耳にされたことがあるんじゃないでしょうか。この曲の使い方が素晴らしいです。これはもう、渾身の演出といっていいと思います。

 この曲はマーティン・スコセッシ監督の『レイジングブル』っていうボクシング映画にも印象的な使われ方をしているんですけど、完全にそれを超えてます。スコセッシに勝ってますよ、古橋監督。

 映像的にも素晴らしくて、蛍がとても効果的に使われています。でも、このお話、5月14日という設定で、旧暦だとしても6月ですから蛍の季節にはちょっと早い。冒頭で一応そのあたりの説明はさらっとされているんですけど、逆に、そこまで蛍の演出にこだわっている感じが伝わってきて、私は全然OKです。

 その蛍の映像と『カヴァレリア・ルスティカーナ』が相まって、TVアニメ史上に残る名シーンが生み出されています。特に、クライマックスのカット割りは、映像効果もあって、一瞬何が起こったのか分かりません。分かんないけどすごい。最初見たときはほんと、びっくりしました。しかも切ない。見事です。ここ、何度見ても泣けます。

 最近はオンデマンドの配信サービスなど便利なものがありますので、もし機会がある人は、第28話からの4話だけでも見てほしいです。絵柄はいかにもな90年代の作風なんですけど、そこは致し方ない、ということで。でも、そんなことは気にならないくらい、すごい演出です。

 第32話以降も素晴らしい回があるんですけど、長くなっちゃうので今回はこの辺で。

 ではまた!

タイトルとURLをコピーしました