『やがて君になる』 第二話~第六話

©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 第六話、前半の山場です。特にBパートの河原の場面は、このお話での最重要シーン。とにかく気合の入りまくった演出でした。特に絵コンテがすごい。と思ったら、あおきえいさんでした。さ・す・が・だー!

超絶絵コンテ

 もう、これ以上はないという素晴らしいカット割りです。最初は川の下流側からのカメラ位置からの切り替えしを基本に、二人の足元のカットをはさみつつ二人の距離感を表現。そして、あるセリフをきっかけに、カメラは突然ポーンとイマジナリーラインを超えて、これまでとは反対側、川の上流側からの画に。このカットがすごい。一瞬、何が写っているのか分からない。よく見ると、橋脚が画面の中央半分くらいを占めてる、大胆なカット。でも、ここで二人の関係が、ひとつの境界を越えてしまったことがはっきり分かる、ある意味とても分かりやすい演出。そこからは、川の上流側からのカメラ位置での切り返しを基本に、二人の距離が縮まっていく。でも、二人の気持ちは完全にシンクロはしていない。うーん。いいなぁー。

 前回、「主役二人の内面を捉えるのがなかなか難しい――ちょっと特殊な考え方、独自の理論を持っている二人なので共感できるようなキャラクターとしてどうやって描いていくのか」と書きましたけど、こうやって絵が動いて、声が入って、演出が入ると、すごく分かりやすくなりますね。原作よりも、キャラクターの内面がつかみやすいです。

二人の関係性

 とはいうものの、このお話はものすごくやっかい、といいますか、主役二人――先輩と後輩の関係が特殊です。先輩は本当の自分が嫌いで常に別の自分を演じている、後輩は誰のことも好きになれないと思っている。自分のことが嫌いな先輩は、誰のことも好きにならない後輩のことを好きになる。なぜなら、誰のことも好きにならいその後輩は、自分のことも決して好きになることはない(はず)、だから先輩はその関係に安堵する。……ややこしい。ややこしいけど、わかります。その関係の必然性がよくわかる。

 本当の自分が嫌いで認めたくない先輩は――ある出来事が理由でそうなってしまったのですが、内面がいびつで不安定です。そんな彼女を安定させることができるのは、決して揺らがない(はずの)何かを持っている人――人の気持ちという不安定なものから発生する「好き」という曖昧なものを持たないその子しかいない。すごくよくわかります。

 でもこれはとても脆い関係性です。針の穴を通すような、まるで細いロープの上を歩いているような。どちらかがほんの少しでも気持ちのブレを起こすと、たちまち成立しなくなってしまうような、微妙な関係。原作の単行本最新刊ラストでは、その変化が起こってしまっていて、これからどうなるの? という感じなのですけど。

 どうやらアニメのほうは、アニメオリジナルの終わり方もしないそうなので、原作途中の状態で終わってしまいそうです。今ちょうど原作の2巻まで消化したところですから、このペースで行くと、1クールだと4巻くらいまで、ということは、劇までいかないことになっちゃいますけど、どうするんでしょう。シリーズ構成はあの、花田十輝さですから、あまりに中途半端なことにはならない……とは思いますけど。

 ともかく、ここまでとても繊細かつ丁寧な演出で、原作以上に楽しめる内容となっていますので、これからも注目して見ていきたいと思っています。

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