あいかわらず安定のクオリティで進んでいます、『ヴァニタスの手記』です。特に第八話以降は、絵コンテを超豪華ゲスト陣が受け持っていて、なんという贅沢。幸せ。第五話から第七話までもいろいろと書きたいことはありますけど、やっぱり第八話から。
第八話絵コンテ：望月智充さん
前回までの舞踏会での騒動の結果、ヴァンピールの実力者ルスヴン卿に助けられたヴァニタスとノエが、彼の執務室に訪問するというのがＡパート。呪持ちの原因がヴァンピールの女王にあるのではないかと考えているヴァニタスは、ここで、女王は生きているのか、とカマをかけます。このシーン、素晴らしいです。
とにかくカット割りが素晴らしい。ヴァニタスの視線、ヴァニタスのハッタリに動揺するルカの動きを追うカット、ルスヴン卿の逆鱗、暗転、ルスヴン卿の行動は見せず、部屋の惨状と首を絞められているヴァニタスという結果だけを見せる大胆な省略。これ、絵コンテ誰？ 板村監督とはまたちょっとテイストが違うような……と思ってエンディングを見たら、なんと、望月智充さんでした。望月智充さんといえば、キャリアがむちゃくちゃ長いし、いろんな作品の絵コンテを切っていますけど、私的には『ふたつのスピカ』の監督・脚本・シリーズ構成が一番印象に残っています。この話をすると長くなるのでまた今度。
このシーン、セリフも登場人物たちの行動もほぼ原作と同じです（結局原作は今四巻まで読んでます）。ジャンヌがヴァニタスにつかみかかるカットが増えているくらい。でも、望月さんのカット割り、音楽、あとは音響効果（小さなホールのような執務室という環境を効果的に活かしています）、そして演出があいまって、ものすごく緊迫感のあるシーンになっています。たぶん、多くの人が原作を読んだときよりも、大きく感情を揺さぶられたはずです。ここはこれまでの回で、白眉といっていいシーンだと思います。むっちゃ気合入ってる。私、このシーンだけ、五回くらい見ちゃいました。
あと、Ｂパートの狩人（シャスール）ローランと対峙するラスト、ここもカメラがぐるんぐるん回るめまいのようなトリッキーなカットで魅せます。ヴァニタスとノエの困惑と不安を表現。あと、この回、ルスヴン卿の執務室をはじめ、俯瞰のカットが印象的。これまでのロングショットを多用した絵作りとも合っています。空間を意識した画面構成がいいですよね。
というわけで、随所に目を引くカット割りを入れつつ、全体的にまとまった非常にレベルの高い回だったと思います。さすが。
第九話絵コンテ：岡村天斎さん
今回は前回からの続きでいきなり戦闘シーンから。そして、今回の絵コンテは岡村天斎さんです。岡村さんといえば、こちらもキャリアが長くていろんな作品を手掛けられていますけど、私的にはなんといっても『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』です。原作・監督・脚本・絵コンテ・演出までやられています。岡村さん、ここ最近はいろんな作品の絵コンテを描かれていますけど、私はやっぱりアクションシーンがうまい、っていうイメージです。
この回も、シャスールのローランが使う特殊な槍の攻撃とか、アクション多めの回なので、これはまさに適材適所。さすがの安定感でした。そういえば、『DARKER THAN BLACK』のヘイくんもワイヤー使ってましたしね。この回も堪能させていただきました。
第十話絵コンテ：浅井義之さん
さて、今回の絵コンテは浅井義之さん。今井さんもこれまたキャリア長いですけど、監督としては『Charlotte』が初めて、つい最近だと『神様になった日』ですね。なぜかどちらも見てます。どちらもKeyの麻枝准さん原作・脚本ですね。これもなぜか分からないんですけど、私、麻枝准さん原作のアニメ（ゲームが原作の『AIR』や『CLANNAD』含め）、結構見ています。別に好きな作家というわけでは決してなくて、いやむしろ、正直ちょっとどうかなーと思う部分の方が大きいのに、ついつい見てしまうのはなぜなんでしょう。
ちょっと話が逸れますけど、例えば、一番最近の『神様になった日』。これ、ネットではかなり否定的な意見が多くて、それを見て麻枝失踪？ みたいな噂も流れていて、さすがにそれはデマでしょうけど、みなさんの批判がいちいち面白くて。もともと麻枝さんの脚本にはほとんどマイナスのイメージしかなかったので、私としてはあの作品、意外と楽しく見れたので、またそれについては改めて書いてみたいと思っています。
で、このヴァニタス第十話ですけど、私自身、浅井さんの特徴をつかみ切れていないので、浅井さんをこの回に持ってきた意味はひまひとつよく分かりません。なんでしょう。ただ、この回で最大のポイントは、ラストのセーヌ河畔でのノエとヴァニタスの二人のシーンだと思います。ここ、一応原作でも落ち葉が待っている、ちょっとしっとりとしたシーンなんですけど、アニメではさらに透明感のある美しいシーンになってます。たぶん、ここですよね。
と、そんな感じで、最新三話、それぞれの絵コンテの方々の良さを堪能させていただきました。このあと、どういう人たちが関わっていくのか分かりませんけど、楽しみです。
