オフビート
第二話以降も、随所に不安な要素をちりばめながらも、基本的には独特のヌケ感というか、オフビートな感じで好調に転がっています、『SSSS.DYNAZENON』です。特に第三話はずーっとくすくす笑いが止まらない感じです。このオフビートな感覚、まるでジム・ジャームッシュの映画を観ているようです。これはやはり脚本の長谷川圭一さんが実写畑の人だからなのか、いやでもただそれだけではないですよね、とにかくセンスがいいです。
あと、第一話の夢芽ちゃんのくしゃみのカットや、第五話のチュロスのカットのように、画面上の人物たちが動かず、喋らず、長い間(ま)を作り出しているカットがあって、いいですよね、こういうの。『新世紀エヴァンゲリオン』のエレベーターの長いカットとか、好きです。アニメーションは常に絵が動いている(止めの絵であっても、なんらかの効果によって時間が進んでいることが示されている)もの、という大前提に逆らっていて。絵がぴたっと止まって動かないアニメーションの画面というのは、一瞬、見ている方を不安にさせます。『エヴァ』のエレベーターのカットはエレベーターが動いていることは分かっているので、言ってしまえば、映画の長回しのカットを見ているのと同じなんですけど、ほとんど絵が止まっているだけの画面はドキッとします。チュロスの場面は一応夢芽ちゃんの口はもぐもぐと動いてはいるのですけど。
夢芽ちゃんの視線の先にあるもの
第一話から第五話まで、たぶんいろんな伏線が張られている気がしますけど、今はまだ具体的なことは分かりません。ただ、ひとつだけポイントを挙げるとすると、第五話の夢芽ちゃんとちせちゃんの着替えのシーン。夢芽ちゃんはちせちゃんをジーッと見つめています。それに気づいたちせちゃんはけげんな顔をするのですけど、結局夢芽ちゃんは何をジーッと見ていたのかは、はっきりとは示されません。夢芽ちゃんが何を見ていたかというと、おそらく、ちせちゃんの左手ですよね。水着になっても左手のカバーは外さない。ということは、たぶん何かを隠しているわけですよね。
実は、ちせちゃんの左手のアップのカットは第三話でも出てきます。みんなで朝練をやっているときのこと、橋の上でちせちゃんが学校に行ってないことを話す場面で、彼女の左手のカットが挟まります。で、次のカットで、お姉ちゃんの形見の知恵の輪(?)を持つ夢芽ちゃんの手のカットに。思わせぶりですよね。たぶん誰もが想像するのは、ちせちゃんの左手には傷があるんだろうな、ということなんですけど、果たして。私は、そこは外してくるんじゃないかと思ってるのですけど、どうでしょう。いずれにせよ、不穏な要素のちりばめ方、見せ方がうまいですよね。第五話のラスト、セリフの途中でブツッと切っちゃうとことか、うまいです。
さて、次回第六話はそろそろ世界の核心に触れる出来事が起こりそうな予感がします。期待して待ってます。