宮崎駿さんが引退宣言をするたびに、私は思ったものでした。ああ、これで当分日本で本格ファンタジー作品を撮れる人はいなくなる、と。
オリジナルの優れたファンタジー作品を作るのがどれほど難しいことなのか、私ごときが今さら語るまでもないと思います。ところが、いました。それを作った人が。しかも初監督作品で。
監督はこれまで多くのテレビアニメのシリーズ構成・脚本を手掛けてきた岡田磨里さんです。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがっているんだ。』が有名ですね。
正直に言いますが、私はそれほど期待していませんでした。先に書いた通り、オリジナルのファンタジー作品はとてつもなくハードルが高いです。岡田麿里さんのシリーズ構成・脚本による作品はこれまでたくさん見てきましたし、好きな作品もたくさんあります。ただ、オリジナルの劇場映画で監督・脚本となるとやっぱりちょっと違うのではないか、と観に行くべきかどうか少し悩みました。
驚きました。本当に素晴らしかったです。まず、当然のことかもしれませんが、脚本が素晴らしいです。綻びがありません。もしかしたら私の見方が甘いのかもしれませんけど、これほど何の引っかかりもなく観ることができた日本のアニメーションは久しぶりです。
さらに、演出も非常にレベルが高いです。奇をてらったことは一切やっていません。丁寧です。一方で、あえて過剰な説明をせず、大胆な省略もやっています。それでも、ちゃんと伝わってきます。私には痛いほど伝わりました。
もしこの文章を読んで、この映画を観てみようかな、と思われた奇特な方のために、内容には触れないでおきます。何の前情報も入れないで観たほうがいいと思いますので。ただひとことだけ。ファンタジーが苦手な人でも、まったく問題ありません。そういう人にこそ観てほしい映画です。
超おススメ!