『MARS RED』 第一話~第六話

© 藤沢文翁/SIGNAL.MD/MARS RED製作委員会

 まったく知らなかったのですけど、朗読劇が原作です。最近よく聞きますね、朗読劇。ちょっと調べてみましたら、原作の朗読劇は2013年初演、2015年再演ということで、かなり前から上演されていたわけですね。原作の藤沢文翁さんのこともぜんぜん知りませんでした。音楽朗読劇創作の第一人者とされているとのこと(Wikipediaより)。この藤沢文翁さん、海外で演劇を学ばれていてなかなかすごい経歴の持ち主でした。しかもおじいさんがあの本田宗一郎の右腕、藤沢武夫さんなんですね。

声優陣

 朗読劇は未見なので、アニメのみの感想です。まず、目を引く、いえ、耳を引くのはその声優陣の豪華さです。 諏訪部順一さん、石田彰さん、鈴村健一さん、そしてなんと山寺宏一さん。山寺さんが深夜アニメの声を当てるのって最近では珍しいのではないでしょうか。あと、私の大好きな沢城みゆきさん。沢城さんは今回少年の声ですけど、こういう低い声の役、最高です。

 あと、一話だけのゲストキャラクターですけど、黒沢ともよさんが出ていて、なんて贅沢な、と思いました。私はいかにもアニメの声優っていう声の演技が苦手なのですけど、黒沢さんは、そこを微妙にずらしていて、かといって俳優が声を当てているみたいな「不自然な自然感」でもなく、そのさじ加減が絶妙なんですね。今作でも、セリフは少ない吉原の遊女の役なんですけど、さすがの存在感でした

おっさんず……

 エンドクレジットでは栗栖秀太郎が最初にきてるんですけど、第六話までの主人公は前田少佐ですよね。つまり、おっさんです。いいですね、おっさん主人公。かっこいいおっさんですけど。で、もう一人おっさんがいます。それが前田少佐の友人、山上徳一です。こちらは、見た目ごついフツーのおっさんです。でも、声は山寺宏一さんという。たまりませんよね。最初、この山上さん、一見がさつでデリカシーのない人なのかな、と思わせるんですけど、回を追うごとに意外な面が出てきて、実は美人の奥さんがいたり、和歌に通じていたりと、印象が変わっていくんですね。で、どうやら前田少佐とは古くからのなじみらしくて、このおっさん二人がなかなかいいんです。

 しかも、第六話では泣かせる展開が待っています。やっぱりいいですよね。でも、まさか関東大震災とは。それで時計のカットが何度も出てきたんですね。

脚本

 もともと朗読劇ということもあって、脚本がいいです。特に第六話では、前田少佐の上司である中島中将の暴走にスポットが当てられるんですけど、その描き方に抑制が効いていていいですよね。ファナティックに描こうとすればいくらでもできると思うんですけど、もっと静かな狂気みたいな感じで。

 あと、前田少佐が中島中将の命令に忠実なのは、戦場で中島中将に助けられたから、というのがさらっと語られていて、うまいです。直接語りすぎない、説明しない脚本って、当たり前といえば当たり前なんですけど、ことテレビアニメに限って言えば、そうではないものもたくさんあるので、ほっとします。この作品は安心、みたいな。

 後半も楽しみです。ところで、帝都を舞台にした吸血鬼もの、といえば、『天狼 Sirius the Jaeger』を思い出します。あちらは昭和初期、こちらは大正時代が舞台ですけど。まったく作風は違いますけど、どちらも独自の雰囲気を持っていていいですね。それにしても、吸血鬼もの、根強いです。それだけ人を惹きつける何かがあるんですよね。

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