『リズと青い鳥』

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 素晴らしいです。

 京都アニメーションはこれまでたくさんの傑作を生みだしてきましたけど、これは、現時点での最高傑作といってもいいのではないかと思います。いえ、それだけにとどまらず、この作品は、アニメーションという表現形態の、ある種の極北に到達しているのではないか、とさえ思いました。

 この映画は、武田綾乃さんの小説をTVアニメ化した『響け!ユーフォニアム』のスピンオフとして制作されています。『響け!ユーフォニアム』は、ある高校の吹奏楽部を舞台にした群像劇です(TVシリーズもすごくいいです!)。この映画のふたりの主人公、希美とみぞれもその吹奏楽部の部員なのですが、TVシリーズでは脇役です。つまり、TVシリーズを見ていない人でも、単独作品として十分楽しめるようになっています。

 監督は『けいおん!』や『聲の形』の山田尚子さん、脚本は吉田玲子さんという鉄壁のコンビ(TVシリーズの脚本は花田十輝さんでした)。

 さて。内容は至ってシンプルです。フルート奏者の希美と、オーボエ奏者のみぞれの関係性の変化を描く、ひとことで言うと、そうなります。具体的にどういう関係性で、どう変化していくか……それはここでは言わないでおきますけど。

 映画は、このふたりにずーっと寄り添います。まるで彼女たちの息遣いが耳元で聞こえてきそうなくらい、近くで。瞳の小さな揺らぎさえも見逃さない、見ていて息が詰まりそうになる、繊細な描写の連続です。

 さりげないしぐさ――髪の毛を触ったり、足を組み替えたり、椅子に座った足元を後ろにずらしたり、腕を組んだり、くっと息を詰めたり、ほっと息を吐いたり。そんな小さなしぐさを積み重ねることで、彼女たちの内面とその変化を描いていく。すごいです。すごい表現力です。

 こんなことができるのは、おそらく日本のアニメーションだけでしょう。確実に世界に誇れる、独自の表現方法だと思います。

 映像だけでなく、音楽、そして音響も素晴らしい。作り手たちはたぶん、劇場で観てほしいと思っているでしょう。でも、どのような形でも、一見の価値はあると思います。

『聲の形』もよかったですけど、山田尚子監督、これまたとんでもないものを作ったものだ、と思いました。超、超おススメです。

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