オーディションエピソードその二です。今回は歌姫彩ちゃんと、委員長杉本さんですね。
役を演じるということ 彩ちゃん
歌は超絶上手いのに自分に自信のない彩ちゃんです。冒頭、なぜ自分がジュリエット役を選んだかというモノローグから。これ、原作にはないんですけど、上手いですよね。彼女の性格、自信のない彼女がなぜジュリエット役を選んだかの理由が分かるようになってます。で、彼女の回想がスタート。
これまで相思相愛になったことがなく、恋愛経験がない自分にジュリエットなんて演じることなんてできないと思っている彩ちゃんです。でも、実は高校のとき、彩ちゃんのことをちゃんと見てくれていて、好きだと思ってくれている人がいたんですね。それをようやく思い出して、演技につなげていくわけです。
この彩ちゃんの回想シーン、特に屋上のシーン、泣けます。ここは原作よりもぐっときますよね。映像と、あとは音楽の強みです。これまでも誰かが自分のことを見てくれていたから、たくさんの観客の中にも、ちゃんと自分を見てくれる人がいるはず、自分の良さを見つけてくれる人がいるはず、ということですね。で、これはアニメではあまり意識されてませんけど、ロミオの最初のセリフが「この大勢の人のなか、たった一人」っていうものなんですね。このセリフと彩ちゃんの気持ちがかぶさってるんです。これは原作のすごさだと思いますけど、ほんと、上手いです。
役を演じるということ 杉本さん
彩ちゃんと同じグループに杉本さん演じるティボルトがいて、ここなかなか難しいですよね。見せ場が分散しちゃいそうで。でも、審査員の小野寺先生の合いの手(?)が入ることでうまく処理しています。
杉本さんはロミオを憎みながら死んでいくティボルトを演じるにあたって、仮想敵をさらさちゃんに設定、さらさちゃんに憎しみをぶつける演技をします。それは迫真の演技なわけですけど、憎しみまでなんですよね。それがまた次回のさらさちゃんのティボルトの憎しみの先にある演技との対比にもなっていくと思います。
ティボルトの演技が終わって、彩ちゃんの歌。以前も書きましたけど、彩ちゃん役の佐々木さんはもともとミュージカル女優ですから、歌の表現力が半端ないです。で、Aパート終了です。濃いですね。
隅田川の水上バス
Bパートはさらさちゃんの回想シーンがメインです。まずは、暁也くんと煌三郎さんとのシーン。ここ、すごく細かいことなんですけど、ちょっと面白いことをやっているので書いておきます。場所は浅草、隅田川の川べりで、暁也くんと煌三郎さんが話してます。で、二人の前の川に水上バスが来るんですね。近くに船着き場があって、水上バスはUターンして船着き場に着き、係の人がロープを手渡しして、船を停泊させる、それをずっと見せるんですね。この数カット、暁也くんと煌三郎さんとの会話とはまったく関係ありません。関係ないけど、その船の動きをずっとカメラは追っている。
すぐに連想したのが劇場版『エースをねらえ!』です。出崎統監督ですね。有名なのでもろもろ割愛しますけど、劇中の試合のシーンで、上空をヘリコプターが飛んでいるんですね。でもそのヘリコプターは別に試合とはまったく関係なくて、ただ飛んでいるだけなんですけど、カメラはそのヘリコプターを追っているんです。これ、話し出すと思いっきり長くなっちゃうのでやめますけど、こういうのすごく好きなので、にやにやしちゃいました。
役を演じるということ さらさちゃんその2
さて、Bパートのポイントは、水族館のさらさちゃんと暁也くんのシーンですね。超重要シーンです。作画も気合入ってます。まずここの千本木さんの演技、素晴らしいです。今のさらさちゃんよりも若干あどけない感じです。今よりも数か月前で幼馴染に対してというのと、大人じゃないけれど子供でもないというセリフの内容をまさに体現している演技です。すごいですよね。
で、そんなまだ大人になり切れていない彼女が、将来への決意表明と、歌舞伎との決別、そしてなりたかった助六は暁也くんに譲りますと語ります。自分は欲しくても絶対に手に入らないものを、手に入れることができる人。その人に対してどんな気持ちを抱くのか。次回のさらさティボルトは、この水族館のシーンが核となります。
さらさちゃんがあきらめなければならなかった歌舞伎への思いと、ティボルトがあきらめなければならなかったジュリエットへの思い。それをシンクロさせて表現するさらさちゃんの演技、アニメはどんな演出を見せてくれるのでしょうか。次回いよいよ最終話です。