『かげきしょうじょ!!』 第四話~第六話

© 斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会

 今期おそらくもっともすぐれた脚本だと思われるこの作品、素晴らしい安定感で進行しています。『ヴァニタスの手記(カルテ)』が今期のハッタリ演出(褒めてます)ベスト作品だとしたら、こちらはオーソドックス脚本演出ベスト作品だと思います。

第四話

 第四話は前回からの続き、奈良っちの過去をめぐる回ですね。JPX脱退の直接的原因となったファンとの再会で、一応その過去との決着(に向けた一歩?)に近づけた彼女を描いています。脚本は前回に引き続き松本美弥子さん。

 このあたり、ほぼ原作通りですね。実は原作も読み始めていて、改めて触れますけど、原作が素晴らしくいいです。なので、これはあまり脚色のしがいがないのでは、と余計な心配をしてしまいます。

 あとやはりこの回で重要なのは、ラスト、忘れたいのに忘れられない嫌な思い出はどうしたらいいのか、と奈良っちがさらさちゃんに聞くシーン。ここでさらさちゃんは、たくさんの思い出で上書きしていくしかないのでは、と答えます。奈良っちはさらさが答えてくれるとは期待してなかったのに、予想してなかったちゃんとした答えが返ってきたわけですね。

 つまり、さらさちゃん自身にも、忘れたくても忘れられない嫌な思い出があるということですね。さらさちゃんの過去は追い追い明らかになりますけど、見ている方もなんとなく分かりますよね。ここでさらさちゃんは背中を向けているので表情は見えません。このあたりもすべて原作通りなのですけど、うまいですよね。

第五話

 第五話は山田さんの回ですね。そしてまたさらさちゃんの才能の片鱗が垣間見える回ですね。初めて見た舞台のセリフを完コピするシーン、ここもさらさちゃんは後姿。ここも原作通りですけど、うまいですよね。

千本木さん、佐々木さん

 このシーン、ふだんのさらさちゃんの声とは全く違う声で、声優さんってすごい、って思いますよね。千本木さんはどちらの声も素敵です。あと、山田さん役の佐々木季子さん、小学校五年生のときに有名なミュージカル『アリー』で主役を張った人なんですね。ラスト、山田さんに必死に訴えかける小野寺先生のシーン、ぐっときます。

 ちなみに、佐々木さんのツイッターでは、原作のほうで山田さんが歌う『The Rose』という曲の弾き語りが見れます。ちなみに、『The Rose』という曲、むっちゃいい曲で、たぶん聞いたことがある人は多いんじゃないかと思いますけど、もともとはベッド・ミドラーが出演した『ローズ』という映画の曲で、ちなみに『ローズ』は歌手ジャニス・ジョプリン(大好き!)をモチーフとしているという話をしだすときりがないのでまた今度。

第六話

 この回から原作の第一巻ですね。前回までは連載誌移行前、ゼロ巻ですね。で、ここからはさらさちゃんのお話中心になっていくわけですけど、まずは、試験的に導入された演劇の授業での模擬舞台での、ロミジュリですね。実はこれ、サイドエピソードが原作にはあるんですけど、そこはカットされています。すごくいいお話なのでもったいないですけど、時間的制約でしょうから仕方ないですね。

演じるということ

 その出自とバックボーンゆえ、演者をコピーする能力にたけているさらさちゃんのすごさが分かる回となっています。ここもまた、千本木さんの演技が堪能できます。かっこいい。でも、あっさりとその壁が安藤先生に指摘されちゃいます。

 このまま原作通りに進むとすれば、これからさらさちゃんと梨園にまつわる過去が明らかになっていくはずですね。第一話~第三話の感想で、私はこの作品のテーマがまだ分からないと書きましたけど、少なくとも原作のテーマはずばり、演じる・舞台に立つということ、または演技・舞台として表現されたものを人に伝えるということ、なのかと。とはいえ私もまだ原作第二巻までしか読んでいないので、なんともですけど。ただ、ミュージカルだけでなく、歌舞伎をストーリーに取り込んでいることからも、そんなことが推測されます。ということはあれですね、この作品の直系の先祖は『ガラスの仮面』ですね。

原作の素晴らしさ

 脚本との違いが知りたくて原作を読み始めたのですけど、すごいです、むちゃくちゃ面白い。これはもしかしたら原作のほうが面白いかもしれません。いえ、単純に比較はできないしすべきではないと思いますけど。

 アニメは残念ながら1クールでしょうから、原作が描こうとしているテーマをどこまで消化できるのか、それともまた別の切り口で着地させるのか、まだ分かりませんけど、非常に高い水準で進んでいますから、期待して見続けていきたいと思います。

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