『灼熱カバディ』 第一話~第五話

©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会

 今期はスポーツものが充実しているような印象を受けます。具体的に挙げますと『さよなら私のクラマー』(女子サッカー)、『バクテン!!』(男子新体操)、『セスタス -The Roman Fighter-』(ローマ時代の拳闘、負けたら死にますので厳密にスポーツとは呼べないかもですけど格闘技なので一応)、『NOMAD メガロボクス2』(未来のボクシング)、『バトルアスリーテス 大運動会ReSTART!』(これだけ未見です、ええと、運動会……でいいんでしょうか?)、となかなかの充実ぶりで、そのなかで一番の大穴がこの『灼熱カバディ』だと思います。

主人公の立ち位置

 カバディ。たぶん、ほとんどの方は、「名前だけは聞いたことあるけど、どういうルールなのかよく知らない、確か競技者がカバディカバディって連呼する変なスポーツだったような……」っていう感じの認識なのではないでしょうか。私もそうです。はっきり言ってこれまでまったく興味ありませんでしたし、特に知りたいとも思いませんでした。

 まず、このお話のポイントは、主人公がそういう私たちの認識とまったく同じ地点からスタートするということです。ただし、主人公の宵越(よいごし)くんは中学時代は有名なサッカー選手として「不倒の宵越」(敵からのアプローチを受けても倒れたことがない)という異名を持つとうい人なので、そこは一般人とは違っていますけれど。お話は、そんな宵越くんが高校でカバディ部に入部し、カバディの魅力にはまっていく、というもの。

 カバディは間違いなくマイナースポーツなので、どういうルールで、どういう競技内容なのか、ストーリーのなかでうまく説明していかなければならないわけですから、主人公がまったくの初心者という設定は、当然といえば当然ですけど、私たちはストーリーが進んでいくにしたがって宵越くんと同じように、その魅力にはまっていくように、うまく組み立てられています。

競技自体の面白さ

 スポーツを題材にしたアニメはこれまで多く作られています。私が見た限り、それらのほとんどを私は面白いと感じていて、なので基本的に、ほとんどのスポーツものの作品はハズレなし、と思っています。あくまでも、基本的に、ほとんどの、です。

 それら、「基本的に、ほとんどの」作品の条件は、「競技自体の面白さを描いている作品」だと思っています。スポーツものなんだから、その競技の持つ面白さを描いているのは当然だと思われるかもしれません。しかし、世の中にはスポーツを題材としているにもかかわらず、競技自体の面白さ、奥深さにほとんど触れない作り方をしている作品もあります。それらは競技そのものよりも、その競技を行う登場人物たちの関係性――確執、対立、嫉妬、愛憎、そういったものに焦点を当て、あくまでも人を描くことに重点を置いているように見えます(ただし、人すらきちんと描けていないものもありますけど)。例えば、問題児投手と捕手との関係ばかりを追って試合シーンがほとんど出てこない野球アニメとか、問題児セッターと幼馴染アタッカーの関係ばかりを追って試合の面白さが伝わってこないバレーアニメとか。人を描くことはとても大事だとは思いますけれど、まず競技があり、その競技が持つ特性や面白さのなかから登場人物たちのキャラクターがあぶりだされていく、私はそういう作りのほうが好きです。

 で、この『灼熱カバディ』ですけど、まず、競技自体が面白い! その競技自体の面白さがビシビシ伝わってきます。そしてその競技の面白さを通して、登場人物たちのキャラクターが浮き彫りになっていきます。いい感じです。では、そこで浮き上がってくるキャラクターはどうでしょう。

天才の孤独

 主人公である宵越くんは前述の通り、中学時代、サッカーでは優秀な選手として名を残しています。ただし、彼のレベルが高すぎて、周りがついていけず、それによってどんどん孤立していくという、最近よく見る天才ゆえの孤独パターンですね。その中学の頃の嫌な記憶が原因で、スポーツ、特に団体競技に嫌気がさし、高校ではスポーツはやらないという誓いを立てている、そういう設定です。

 よくあるといえばよくある設定なので、これ自体は取り立てて言うほどのことではないのですけど、スポーツをやりたくないという主人公がカバディという超マイナースポーツにいかにしてハマっていくか、そこにうまく生かしていると思います。主人公はいわばマイナスの状態からスタートしているわけで、その状態の主人公がスポーツに対して再びのめり込んでいく、熱くなっていく、その落差が大きいほど、見ているほうも熱くなっていきますよね。

 そんなわけで、まだ主人公はようやく練習試合に出たばかりの段階ですけど、なかなか面白いです。出てくるキャラクターもいいですよね。というわけで、今期スポーツものの大穴、予想を超えた作品でした。

タイトルとURLをコピーしました