私はその内容に関わらず、手掛けた作品を必ず見るようにしている脚本家さんが何人かいます。そのうちの一人が花田十輝さん。
花田さん脚本!
というわけで。花田さんが脚本・シリーズ構成なので見始めたのですけど、正直つらかった……十話まで。かつて世界から失われた魔力を得ることのできるたったひとりの魔術師の座をめぐって、少女たちがロボットに乗って戦うという、既視感ありまくりのこのストーリー、これ、花田さんがやる必要あるのかなーとずっと思いながら見てました。
花田さん脚本?
監督の渡邊政治さんの前作『Re:ゼロから始める異世界生活』もそうでしたけど、登場人物に対して過剰なまでの苛酷で残酷なシチュエーションが用意されていて、それがまた見ていて辛さ倍増させます。別にそういう苛酷な状況が見ていてつらいのではなく、あまりにも過剰な演出に胸焼けしてしまうのです。登場人物がどれほど絶叫しても泣きわめいても、いえ、そうなればなるほど、そのキャラクターはどんどんと滑稽な存在になっていきます。鼻白んでしまうのです。
ただこれはもしかしたら、純粋な好み、合う合わないの問題なのかもしれません。もしかしたら多くの人は第九話までの彼女たちの織り成す熾烈な戦いと人間ドラマに心を動かされるのかもしれません。残念ながら私はそうはなりませんでしたけど。
第十一話
しかし。主人公満月ちゃんの正体が明かされた第十話を経て、第十一話。ここにきてようやく花田十輝さんの本領が発揮されました。ううう、長かった。この第十一話、特に戦いも人間同士の激しいやりとりもありません。逆に、シリーズ中、最も静かな回です。
自分の正体を知って、この世界で生きているということの素晴らしさ、それは奇跡のようなことだと気づいた満月ちゃんが紡ぎだす言葉たち。それらは決して目新しいものではなくて、どちらかというと、ありふれた、手あかのついたような言葉たちです。なのに、ぐっとくる。本当にぐっときます。なんで? すっごく当たり前の言葉だよ。なのに、なんで? 思わず私は続けて2回見ました。
やっぱり、花田さん脚本!!
コンビニの駐車場のシーン。2回目なのにやっぱり涙腺崩壊です。そして、やっぱりどうしてこんなにも心を動かされるのか、分かりません。なんだろう。トンカツまん? コンビニの店員さんの使い方とかむっちゃうまい。そして、第一話に張っていたお弁当の伏線もちゃんと回収しているのがさすが。
世界から魔力を無くすために魔術師を目指す新月ちゃん、魔力がなくなってしまったら存在が消えてしまう満月ちゃん。それがわかっていて、満月ちゃんはこの世界のために、魔力を無くして、と新月ちゃんにお願いする。その存在が消えたとしても、誰かの心の中にはちゃんと残っている、と。
セリフの説得力
これもよくあるセリフといえばよくあるセリフです。実は私も自分の小説の中で似たようなセリフを書いたことがあります。でも、満月ちゃんのセリフを聞くと、なぜか本当にそんな気が――私の心の中にも、普段はっきりと意識していないだけで、消えてしまった誰かの痕跡があるのではないか――そんな気がふと、してしまうのです。このセリフの説得力、リアルさはなんでしょう。
この世界から魔力を無くして
Bパート、日常パートを入れて、花火のシーンもうまいです。ハッとさせられます。そして、最後にダメ出しでもう一度満月ちゃんは言います。「この世界から魔力を無くして」。
本当に素晴らしい回でした。たぶん次回が最終話なのでしょう。どんなラストが待ち受けているのか、待ち遠しいです。