『SSSS.DYNAZENON』 第十一話

©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会

 前回ラストで不穏な終わり方をしましたけれど、今回、いつものようなリアルな日常からスタート、怪獣優性思想もいつもの感じです。ただし、もうあの世界には怪獣は出現しない、とこのこと。どうやら今回は、戻ってきた日常回、みたいです。

戻ってきた日常描写

 前回の、デフォルメばりばりの作画、ケレンのある演出から、ふたたび以前の感じに戻りました。ほっとします、この感じ。この作画で前回も……(以下略)。

 怪獣の種が尽き、もう怪獣は出なくなっちゃったということで、それぞれの日常、それぞれの変化の兆しが描かれます。夢芽ちゃんはお姉ちゃんへの気持ちに決着がつき、蓬くんは夢芽ちゃんへの気持ちに決着をつけようとします。いいですね、若いって。で、この二人の会話の感じ、すごくいいです。ガウマのことを心配したり、お墓参りに行ったり、特に、夜川べりを歩いているときの二人の感じ、むっちゃいいです。蓬くんが告白するところも、いいですよね。あと、その前に、「怪獣がいなくなっても、南さんに会いたい」みたいなことを言う蓬くんに夢芽ちゃんが、「ん」って言うところとか、いいです。こういう感じ、実写では別に普通ですけど、アニメではなかなかお目にかかれません。私はアニメでもこういうお芝居がもっとあってもいいと思うんですけど、無いんですよね。ぐっとくるのになー。

変化をどう見せるか

 今回登場人物に起こった変化はいろいろありますけど、やっぱり一番大きいのは、暦くんが就職活動を始めたことではないでしょうか。暦くんといえば、彼の部屋、一人ぐらしじゃなくて、実家の部屋だったんですね。私は勝手に一人暮らしだと思ってました。暦くんがスーツを探しながら、「お母さーん」っていうところとか、これまでの視聴者が抱いていた感覚を揺さぶる、うまい脚本ですよね。私は以前、第六話の感想で「暦くんは生活費とかどうしてるんでしょう」と書きました。このときは暦くんは一人暮らしをしていると思い込んでたんですよね。

 暦くんの変化は、実は暦くんだけにとどまるものではありませんでした。ちせちゃんが中学校に行く(結局中には入れずですけど)んですけど、これは明らかに暦くんの影響ですよね。口ではさんざんなことを言ってましたけど、ちせちゃんは働かない暦くんのことをかっこいいと思っていたはずで、そんな暦くんが好きで、それを自分への言い訳にしていたのだと思います。でも、その言い訳は崩れてしまいました。暦くんの変化は自分だけでなく、周囲に対してもいい影響を与える、そういう描き方、すごくいいです。キャラクターの配置と関係性の変化がうまいですよね。

 そして、あいかわらずモテモテの暦くん、ムジナさんに「憎い」と言われちゃいます。なんか、おいしい役ですよね、暦くん。

 で、もちろん、このまま終わるわけもなく、ラスボス、シズムくんが怪獣となって登場。ラスト、どうまとめるのでしょう。楽しみです。

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