『ぼくたちは勉強ができない』 第四話~第十三話(終)

©筒井大志/集英社・ぼくたちは勉強ができない製作委員会

 面白い。最後まで素晴らしい安定感を誇ってました、この作品。世の中にあまたあるラブコメメインのラノベやそれを原作としたアニメとは、確実に異なっています。それはいったい何なのか。

凡百のハーレム物との違い

 すみません、煽っておいて何なんですけど、私はとりたててラブコメを書く方も読む方も真剣に追求しようとは思っていないので、よく分かりません。分からないけど、明らかに違います。ある程度のリテラシーを持っている方であれば、たぶん理解してもらえると思います。

 ストーリー自体は、一般的によくあるハーレム構造です。主人公の男の子を中心に、複数の女の子たちが取り巻いて、主人公は彼女たちから好意を寄せられる。ただし、この作品では、女の子たちの気持ちに差があって、中学の頃からずっと想っていて(舞台は高校)できれば付き合いたい、っていう子から、なんとなーく意識している子まで、気持ちに幅がある。そして、その感情も、発生するイベントによって常に揺れ動いている。このあたりの感情の揺れや変化が、それぞれのエピソードごとにとてもうまく表現されていて、まずはそこが本作の『違い』のひとつじゃないかと思います。

女の子たちの気持ちの変化

 つまり、女の子たちの気持ちが単純に、主人公のことが好き! の一択じゃなくて、いろんな好きの種類や変化を描いていること。でもこれって、当然といえば当然で、ハーレムものだからといって、主人公の男の子のことを『好き』というひとくくりで描いてしまう作品はあまりにも頭が悪すぎますし、そんな浅はかな内容に気持ちよさを感じる読者・視聴者もまた同様なわけで、今さら改めて言うことでもないのですけど。

お約束

 男の子が主人公のラブコメですから、当然のごとく、いやそんな都合のいいうまい話が……っていうムフフな展開がばんばん出てきます。というか、そんなことの連続です。そこはもうお約束ですよね。でも、それをいかに、あざといんだけどあざとくなく、わざとなんだけどわざとらしくなく見せるか。そこが重要だと思うのですけど、この作品はそこをクリアしていると感じます。いやーほんと、よくもまあ毎回そんなこと思いつくなーっていうことの連続です。ハッキリ言って、出来事自体は中学生男子の妄想レベルなのですけど、それをここまで持ってくるのってかなりのスキルが必要だと思います。

 それはひとえに、監督の岩崎良明さんと、シリーズ構成・脚本が雑破業さんの長年の経験に裏打ちされた力量によるものだと思います。ラブコメを書く人は、これを見て技を盗むべきだと思います、マジで。

文乃ちゃんエピソード

 ほとんど具体的な内容には触れていませんけど、例えば最終十三話。このお話は、これまでは主人公に対して特に深い好意を抱いていなかった文乃ちゃんという子のエピソードなのですけど、彼女と主人公の距離が縮まるエピソード。これもまた都合のいいムフフな展開なんですけど、文乃ちゃんが星を好きだったという設定(私、すっかり忘れてましたけど重要な設定)をちゃんと活かしつつ、その彼女の設定にまつわる大事な過去にも触れ、さらにSFの古典的傑作、フレデリック・ブラウンの『天の光はすべて星』をさらっと放り込んでくるという、もうほんと、憎いわーとなっちゃう素晴らしさ。

 そんなわけで、楽しませていただきました本作は、第二期が今年の十月からスタートするそう。うん。やっぱりいい作品はこうでなくっちゃね。二期も楽しみです!

オープニングも!

 あ、そうそう、忘れるところでした。この作品、オープニングの映像がすごくいいです。クローズアップの短いカットの積み重ねで、それ自体はよくある手法ですけど、動作の切り取り方が素晴らしい。センスいいです。絵コンテはええと……松竹徳幸さんという方、覚えておこうと思いました。

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