『恋は雨上がりのように』

© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

 漫画が原作ですね。映画化もされました。

 ストーリーだけ見ると、女子高生と中年男性とのラブストーリー? と思われがちですけど、実は違います。もちろん、恋愛要素もあるんですけど、本当のテーマは別にある、と私はみました。

とはいえ、前半は主人公のあきらちゃんが、バイト先のファミレス店長さんに恋をして、積極的にアプローチしていくという、世の中年男性にとっては夢のようなお話が展開していくわけですけど。ただ、この店長さん、非常に常識人で、終始大人な対応のため、恋愛自体は発展していきません。

 正直言って、女子高校生に言い寄られて、ここまで揺らがない中年男性がいるとは思えないんですけど、そこはまあいいと思います。

 恋愛に代わって、後半は別のテーマ、というかこの物語の本来のテーマが立ち上がっていきます。私はずばり、『青春』だと思ってます。

 あきらちゃんは、将来有望な陸上選手でありながら、怪我で陸上の道をあきらめてしまったという過去を持っています。かたや、店長さんは、一時期小説家を志していましたが、芽が出ずに挫折。そのことがどうやら離婚の遠因になっているみたい。でも、その情熱は心の奥深く未だに熾火のようにくすぶっている。

 つまり、二人とも何かを志しながらも道半ばであきらめている、もしくはあきらめかけているという共通点があるんですね。この設定がすごくうまいです。そういうのって、年齢なんて関係ないですから。そういう共通項を持っている年の離れた男女のドラマという部分が、単なる年の差恋愛ものとは一線を画す要因となっています。

 監督は渡辺歩さん、シリーズ構成・脚本が赤尾でこさん、というのも、私的にはポイントが高いです。このコンビ、『謎の彼女X』というアニメと同じなんですけど、この作品が私的には非常にツボだったので、注目してました。

 前半はあきらちゃんのぐいぐいくる若さを前面に押し出した演出で、後半は店長さんの過去と向き合う姿勢をじっくりと描く落ち着いた演出で、さすがです。こういうケレン味のない、真正面からがっしりと受け止めなければならないテーマを持つ作品の演出は、渡辺監督って本当にうまいです。今期は『逆転裁判』を手掛けていて(実は私、この作品もすごく好きなのです)、コンスタントに作品が見れて嬉しい限りです。

 青春というものは、たとえ失いかけたとしても、決して終わらないものなんじゃないのか、というのがこの作品の裏テーマだと思っているのですけど、ラストはそれを見事に表現していて、素晴らしいと思いました。  原作もきちんと完結していて、こちらもいいですね。どちらも、心に残る素晴らしい作品でした。

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