『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』 第一話

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

 原作は第一巻だけですけど、読んでます。なかなかに刺激的なタイトルですよね。説明するまでもなく、原作はラノベですね。タイトルだけ見ると、よくある学園ラブコメかなーと思われるかもしれませんが、SFとラブコメをうまく絡めた作品でした。もちろん、SFファンは「夢を見ない」と付いている時点で反応しちゃう訳なんですけど、最近はよくわかりませんからね、タイトル。あ、でもレプリカントとかは出てきません(第二巻目以降は知りません)。それはいいとして。

量子論ネタ

 アニメでは、第一話であっさりとネタを明かしている(原作ではもうちょっと引っ張っていたんですけど)ので、別に書いても問題ないと思いますから書いちゃいますけど、量子論ネタです。あの、みなさんが大好きなシュレディンガーの猫です。よかったですねー、みなさん。ほらほら、シュレ猫ですよー。しかもシュレ猫+ラブコメですよー。わーい。なんかもう、日本の出版社はグレッグ・イーガンにお金払ってもいいんじゃないかと思っちゃいますよ。それはいいとして。

テーマ

 また原作のお話で恐縮なんですけど、この作品、量子論ネタをとてもうまく取り入れて消化しています。あまり詳しくは書きませんけど、ヒロインの置かれている状況と、昨今の特に若い人たちを取り巻く環境と、量子論の設定がうまく融合していて、なるほどなーと納得させられます。

 否が応でも空気を読まなければならなくなった、今の世の中の息苦しさと、それにどう立ち向かっていくかがこの作品のテーマの一つなんですけど、そういった作品のテーマとSF的設定がうまく融合しています。この二つの融合が成功すると(これがなかなか難しいんですけど)、その作品はとんでもない魅力を発揮するということは、人が持つ心の壁をATフィールドというSF的設定に落とし込んだ作品が証明していますよね。それはいいとして。

ラノベ

 そんなわけで、原作はある意味素晴らしい設定と筋書きを持っています。ただでも、やっぱりラノベなんですよね。個人的にはものすごーくもったいないです。同じネタでもっと一般文芸の表現方法で書けば……とついつい思ってしまいます。

 でも、ラノベなので、身もだえするような主人公とヒロインの憎まれ口のセリフの応酬とか、説明過多な情景・状況・人物の外見描写とか、主人公が過去に問題を抱えていて学校では孤独とか、主人公が高校生とは思えないほど成熟している(過去の出来事があるにせよ)とか、主人公と絡む女性が五人以上いる(妹含む)とか、妹が主人公のベッドにもぐりこんでくるとか(これも過去の出来事が理由になってますけど)、主人公の両親が家にいないとか(一応過去の出来事がらみの理由があるにせよ、ここが一番ひっかかりました)、テンプレは当然あります。それはいいとして。

ラノベ回避

 もちろんラノベなので仕方がないのですけど、私が苦手な地の文の説明過多な表現は、実はアニメになることで解消されます。そういう描写はアニメになると、すべて絵になっているわけですから。なのでそこは嬉しいですね。あとの部分はゴニョゴニョですけど……。ただ、そいう部分があったとしても、どういう表現形態をとっているとしても、先に挙げたようなテーマ性を持っている、特に時代や世相というものに切り込んでいこうというスタンスを持っている作品は、私は基本的に応援したくなります。

 アニメの方は、このペースだと十二話に行くまでに原作第一巻を消化しちゃいそうな感じですけど、どうなんでしょうか。第一巻では明らかにされていない謎もあるので、そのあたり含めて、期待しつつ見ていきたいです。原作も二巻目以降読もうと思います。

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