2クール24話で長いですけど、それだけのボリュームは必要だと思わせる、なかなかに深いテーマを内包した作品でした。
小説家になろうなどの小説投稿サイトが増えていて、そういう場所に自分の書いた小説を投稿するアマチュア作家の人はたくさんいると思います。pixivやwebサイトに漫画をアップしている人もたくさんいるでしょう。実は私も某所で小説を投稿していたりします。例えば、自分の書いた小説のなかでつらい経験をする登場人物がいるとします。もしもその人物が目の前に現れて、「どうしてこんなにつらい目に遭わせるの?」と訴えてきたら。作者は、その登場人物に対して、きちんと納得のいく答えを与えることができるでしょうか。それがこの作品のキモです。
とはいえ、お話自体は小難しいわけではく、とっつきやすいエンタメです。小説や漫画やアニメといった創作物に登場するキャラクターたちが現実世界に顕現し、この世界の存亡をかけた戦いを繰り広げるというもの。その作者=クリエイター(創造主)たちと、彼らが作ったキャラクター(被造物)たちの関係性がひとつの軸となります。作者とその創造物の中の登場人物との関係は、様々です。自分の分身のように感じて大事にしている作者もいれば、単にお金を儲けるためのツールとしてしか見ていない場合もあるでしょう。この作品でも、いろんな関係が登場して、また、その関係性がリアルで、見ている方は思わず引き込まれていきます。
この作品はいわゆる業界ものに分類することができます。漫画や小説、アニメといったコンテンツを制作し、それによって利益を得ている業界ですね。つまり、この作品が題材としているのは、この作品の作り手たちが日々触れている、自分たちの仕事の範疇の物ですから、そこはリアルに描けて当然なのです。なので作品としての価値は、その慣れ親しんだ題材に、さらにどれだけのものを積み上げられるかが勝負でしょう。そして、それは見事に達成していると感じました。
後半、この世界の存続を賭けて、多くの創造主たちと被造物たちが『敵』に対して共闘します。一方で、その『敵』となるキャラクターが、なぜこの世界を憎み、『敵』という存在となっているのか、その理由も、とても納得できるものとして描かれています。ということは、この世界を守ろうとする者たちの中に、深い葛藤が生まれます。その葛藤が生むドラマが熱い。バトルも熱いです。そして、ズシンと胸に響きます。
なぜズシンと響くのか。それは、物を作り出す人間は、自分が作り出したものに対して責任を負わなければならないという大原則がきちんとベースに置かれているからです。でもそれは、当然と言えば当然。だって、それを守ってきた人たち、これまでプロとしてやってきた人たちが、この作品を作っているのですから。
自分の手で何かを生み出したことのある人であれば、きっと心に響くものがある作品だと思います。生み出すことの苦しみを知っている人であればなおさら。