『宝石の国』

© 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

 原作は漫画で、作者は鬼才、市川春子さん。この作品を語るとなると、原作漫画の素晴らしさに触れないわけにはいかず、そうなるとなかなかアニメの話にまでたどり着かなくなってしまうのですが、仕方ありません。そこは避けて通れないのです。とにかく凄まじいオリジナリティです。この人の頭の中はいったいどうなっているのでしょう。覗いてみたい……。

 舞台は、遥か未来の地球。具体的にどのくらい未来なのかは言及されていませんけど、とにかくとんでもなく未来です。すでに地球上には人間の姿はなく、その代わりに、体が宝石でできた生命体が暮らしています。と書くと、恐らくほとんどの人が「はい?」と思うでしょう。そういう人はまず、知的生命体というのは有機物で構成されているものだという固定観念を取っ払わなければなりません。

 その世界では、宝石でできた生命体(長いので以下、宝石)を狙って月から月人という存在が定期的にやってきます。理由は明らかにされていませんが、月人は宝石たちをさらっていき、宝石たちはそれを阻止するために闘います。宝石たちと月人との闘いを軸に、世界の謎が徐々に明かされていくというお話。さて、これだけを聞いて「あーなるほどそういうやつねー」と、イメージできる人は、果たしてどれくらいいるでしょう。控えめに言って、ぶっ飛んでます。この感覚、まさにセンス・オブ・ワンダーです。

 宝石たちは外見はほぼ女性で、細くて手足が長い、ありえないほどの美しいプロポーションを持っています。その宝石たちがこれまた長く細い武器で闘う姿は、とにかくむちゃくちゃかっこいい。市川春子さんの趣味が炸裂しています。アニメが放映される前に制作されたプロモーションビデオがyoutubeで見れるので、それだけでも見てほしいです。

 アニメは、原作の独特の世界観をうまく映像化しています。原作はあまりにもトンガリすぎていて、たまに読みにくい部分があるのですが、そこはさすが映像のプロです。とても分かりやすくなっています。たぶん原作がとっつきにくい人でもアニメはすんなりと入れるのではないかと思います。

 宝石でできている人体という特殊な設定と3Dがうまくマッチして、登場人物たちが無理なく表現されています。こんな作品でさえ映像化できてしまう現在のアニメーションの技術に改めて感嘆です。アクションのキレも素晴らしいです。

 そしてなんといっても宝石である彼女たち(ほんとは性別はありませんけど)の美しさ。コスチュームも素敵です。宝石なのに揺れ動く髪の毛も処理もすごい。なんかもう、眺めているだけで満足です。

 アニメは1クールで、物語の途中で終わってしまいましたけど、ぜひ第二期を作っていただきたいです。原作も佳境に入っているようなので、次で何とか収まるでしょうから。そんなわけで、みなさん、応援してくださいな。あと、市川春子さんの短編集も素晴らしいので、長いの読むのめんどう、という方はぜひそちらをおススメします。

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