『エロマンガ先生』

©2016 伏見つかさ/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/EMP

 言わずと知れたライトノベルの人気作が原作ですね。タイトルが秀逸ですよね。ちなみに、内容はまったくエロくないです。

 この作品の魅力は、なんといっても、もうエロマンガ先生こと、紗霧ちゃんの可愛さ。それに尽きます。いえ、すみません、尽きません。それ以外にもあります。でも、とにかく本当に可愛い。これはもう、原作者、原作イラストレーター、アニメスタッフ、声優が持っている力を最大限に集約させて作り上げた奇跡のキャラクターと言っても過言ではないです。

 作品全体としてみても、とてもよくできています。私はそれほど熱心なライトノベルの読者ではありませんが、ライトノベルの大半は成熟した大人が到底没頭できるものではないと思っています。もちろん、ライトノベルがメインターゲットとしている層があって、その層のニーズに合ったものを作るというのは当然ですから、それはそれで一向に構わないのですが、この原作者の『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』も、この作品も、大人の鑑賞に耐えうるまともな感性で書かれていると感じます。

 もちろん、ラノベのテンプレ的な展開はあります。それでも、単に若い男性の願望充足目的の短絡的で安直な展開とは一線を画していることは明らかです。例えば、これは『俺の妹』についてですが、あの作品にはちゃんと主人公の父親が出てきます。私は、主人公の父親、お父さんがきちんと描かれているかどうかって、大きなポイントだと思っています。

 安直なラブコメは父親を描くことを避けます。長期海外出張中だったり、仕事が忙しかったりして、その存在を何とか隠そうとする作品が多いです。その理由について書きだすと長くなるのでやめますけど、そういう意味で、この原作者のラノベは一般的なラノベとはちょっと違っています。『エロマンガ先生』では具体的な両親の描写は出てきませんけど、そこにはちゃんと理由があるみたいです。そういう部分で、私はとても信頼できる原作者だなと感じるのです。

 と、そんな細かなことはどうでもいいとして、紗霧ちゃんのキャラクターは老若男女問わず広く受け入れられる無敵の存在だと思います。ライトノベルやライトノベル的なものに興味はあるけれど、体験するのに二の足を踏んでいる、そんな普通でまともな感性を持っている人にこそ、見てもらいたい作品です。

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